血液検査には実にさまざまな検査項目があります。現在では三千種以上の検査ができるといわれるほどですが、その中に「腫瘍マーカー」と呼ばれるものがあります。ひとことでいえば「がん」を見つけるためのものです。今回はこの「腫瘍マーカー系検査」についてご紹介します。
記事監修
笹倉渉 先生
麻酔科標榜医、麻酔科認定医、麻酔科専門医、日本医師会認定産業医。『公立昭和病院』初期臨床研修医。『東京慈恵会医科大学附属病院』麻酔科・助教。『公益社団法人 北部地区医師会 北部地区医師会病院』麻酔科・科長を経て、現『MYメディカルクリニック』院長。
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■「腫瘍マーカー」で悪性腫瘍を見つけることができる!?
一般に「がん」といわれる悪性腫瘍の中には、特徴的な物質を産生するものがあります。その物質が血液中に漏れ出していれば、その物質を検出することでがんを発見することが可能、と考えられます。
このような特定のがんを見つけるのに役立つ物質を「腫瘍マーカー」と呼びます。血液検査には、これら腫瘍マーカーをチェックするための検査項目があるのです。
■代表的な「腫瘍マーカー」は?
現在、多くの腫瘍マーカーが使われていますが、いまだ研究途上にありますので、日々新しいものが提案され、古いものでは検証が積み重ねられています。
そのため有用性について疑問が提起されたり、ほかの悪性腫瘍を発見するのにも使える、といった情報が更新されたりするのは日常茶飯事です。ここでは、信頼度が高いとされる代表的な腫瘍マーカーをご紹介します。
がんの種別によってどのような腫瘍マーカーが使われるか、は以下のようになります。「SCC」「CA-125」などが腫瘍マーカーの略称です。実際の腫瘍マーカー名はたとえば「糖鎖抗原125」ですが、略称の「CA-125」が主に使われます。
●食道がん
SCC
●肺がん
CA-125、CEA、SLX
●扁平上皮がん
CYFRA、SCC、NSE、ProGRP
●肝細胞がん
AFP、PIVKA-II
●胆道がん
CA19-9、CEA
●前立腺がん
PSA
●神経芽細胞腫
NSE
●甲状腺髄様がん
NSE
●乳がん
CA-125、CA15-3、CEA、NCC-ST-439
●胃がん
CEA、STN
●膵臓(すいぞう)がん
CA-125、CA19-9、CEA、ElastaseI、NCC-ST-439、SLX、STN
●大腸がん
CEA、NCC-ST-439、STN
●子宮頸(けい)部がん
βHCG、SCC、STN
●子宮体部がん
βHCG、SCC
●卵巣がん
βHCG、CA125、STN、SLX
上記のように、部位の違うがんでも同じ腫瘍マーカーでチェックできることが分かります。たとえば「CA-125」は、卵巣がんの7-8割で陽性を示す腫瘍マーカーですが、「肺がん」「乳がん」「膵臓がん」のチェックにも使われるのです。
これらの腫瘍マーカーは、普通の血液検査では行われません。人間ドックなどでもオプションメニューになっていることがほとんどです。もし気になるようであれば、一度検査を受けてみると良いでしょう。
ただし、腫瘍マーカーは確実な早期診断に使えるほど確立した技術ではありません。実際には進行したがんの経過を判断したりといったことに使われることも多いのです。
また腫瘍マーカーの値が普通と違う動きをする人もいらっしゃいます。がんがないのにも関わらず腫瘍マーカーの値が大きく出たり、逆にがんが進行しているのに腫瘍マーカーの値が上昇しなかったり、といったことがあり得ます。
実際に「腫瘍マーカー系検査項目」を受けるのであれば、このようなことを理解してからにしましょう。また、検査を受ける前に医師から十分な説明を受けることも大事です。
(高橋モータース@dcp)