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握手ができない…! 止まらない手汗を治すためには?

2018.01.24

握手ができない…! 止まらない手汗を治すためには?


仕事で会った人と握手をする、恋人とデート中に手を繋ぐなど、日常生活で、手と手が触れ合う機会は案外少なくありません。そんなときに気になるのが「手汗」。いざというときに手汗をかいていて「気持ち悪いと思われたらどうしよう」と不安な気持ちになり、さらに汗をかいてしまう……なんて経験がある人もいるはず。今回は、そんな手汗の悩みについて、山本英博クリニックの山本先生にお話を伺いました。

取材協力・監修

山本 英博 先生


1985年神戸大学医学部卒業後、同第二外科に入局。国立癌センター呼吸器外科での研修後、国立療養所兵庫中央病院呼吸器外科医長に就任。神戸大学医学部第二外科教官として着任し、内視鏡による呼吸器外科手術(低侵襲手術)に取り組む。2002年7月以降YKC(Yamamoto-Kanehira Clinic)を開業し、2006年10月以降山本英博クリニックと改名。多汗症専門の診療を行う。


▼山本英博クリニック

http://www.best-ets.com

■手汗をかく=緊張だけではない

――まずは、汗をかくメカニズムについて教えてください。


山本先生

「汗をかく要因は、大きく3つに分けられます。1つ目は、緊張やストレスを感じたときの精神性発汗。2つ目は、暑いときに体温を調節するための温熱性発汗。3つ目が辛いものを食べたときの味覚性発汗です。これらは、人間誰にでも当てはまる発汗の要因です」


――手汗は、緊張したり不安な気持ちになったりしたときにかくものだというイメージがあります。手汗をかきやすい人は、精神性発汗が多い人ということになるのでしょうか?


山本先生

「いいえ、必ずしも緊張しないから手汗が出ないというわけではないんですよ。手汗を多くかく人の場合は、緊張していない状態でも汗をかきます。手汗を含む多汗症は、精神的疾患ではなく、身体的疾患なんです」


――というと、皮膚にある汗腺が異常に発達していることなどが原因ですか?


山本先生

「それも違うんです。汗腺は、いわば汗の工場なんですよ。汗を出すように汗腺に指令を出すのは、自律神経のうちの交感神経というもの。多汗症の方は、この交感神経の働きが通常よりも強いために発汗が多いと考えられます」


――交感神経が過剰に働いてしまう原因は、なんなのでしょうか?


山本先生

「発汗に関わる神経細胞の膜が弱いことが原因だと考えられます。これは、遺伝子が関係している可能性が高いです。多汗症で悩まれるのは、親子や兄弟で共通していることが多く、遺伝するものなので、放っておいて治るものではありません。だいたい小学生くらいで自覚症状があり、40代までにピークを迎えます」

■手汗を抑えるためには?

――手汗の治療法にはどんなものがありますか? 市販で汗を抑えるクリームなども販売されていますが、正直効くのでしょうか?


山本先生

「市販薬の成分は、塩化アルミニウムですね。患部に塗布することで、汗の分泌腺を変性させて、汗をせき止める働きがあります。ただし、汗の量が多いと効果が期待できませんし、肌が荒れるなどの副作用もあります。効果も一時的ですが、治療の第一歩としてまずはこの塩化アルミニウムを使った療法で、様子を見ることがあります。


ほかに、水が入った容器に手を入れて、30分〜1時間ほど弱い電気を流して汗の出口をふさぐイオントフォレーシスという治療法もあります。これも継続して行う必要があるのと、痛みや肌荒れを伴うことがあります」


――最も確実に効果が期待できる治療法は、やはり手術なんでしょうか?


山本先生

「そうですね。多汗に悩み、日常生活に支障をきたすレベルの場合は、胸腔鏡下胸部交感神経節切除術(ETS)という手術を行います。これは、発汗の指令を出す交感神経を切除する手術のこと。手汗の場合は、頚部から第六肋骨までの胸部交感神経節の働きが通常より強いことが原因のため、全身麻酔をかけて胸部を切開し、手術を行います」


――手のひらではなく、胸を切る手術なんですね。手術にはどれくらいの期間と費用がかかるのですか?


山本先生

「皮膚を3mm程度切開する内視鏡手術です。手術時間自体は20分程度で、その日のうちに帰宅できます。術後は、激しい運動などは控えていただきます。手術代は保険適用で、自己負担は10万円前後ですね」


■重要なのは多汗症について理解すること

――手術による副作用はありますか?


山本先生

「代償性発汗を引き起こす可能性があることは、手術を受ける前に理解いただきます。代償性発汗とは、術後に手のひらの汗が止まっても、別の場所から汗が出やすくなってしまうことです。背中や胸などに多く見られます。手汗の原因となっていた神経を切除することによって、別の神経が活発になってしまい現れる症状なので、こちらも治すには繰り返し手術を行う必要があります」


――手術による代償を理解した上で、治療に臨むことが重要ですね。


山本先生

「そうですね。一度手術をして代償性発汗が出てしまうと、余計に悩んでしまったり、治療に対して懐疑的になってしまったりする患者さんが少なくありません。もちろん医療の現場が抱える課題は多く、試行錯誤の繰り返しですが、根気強く原因を探って治療を続ければ、決して治らない病気ではないんです。当院では、患者さんに3時間ほどかけて多汗症について理解いただく『多汗症教室』というものを行なっています。多汗症や代償性発汗の知識、それらの対処法などについて深く理解をいただいてから治療するためです。得体が知れないものは怖いので、まずは理解することが重要ですよ」



どんな手術でもリスクはつきもの。治療を進めるには、患者さん自身の理解と、医師との信頼関係が大切ですね。手汗を含む多汗症に悩む人は、知識と経験が豊富な信頼できる専門医を見つけるところから始めてみてください。


(取材・文:阿部綾奈 編集:ノオト)