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子宮腺筋症とは?症状と治療法

2017.10.24

子宮腺筋症とは?症状と治療法


月経のある女性の10人に1人が「子宮内膜症」にかかっているといわれますが、この子宮内膜症に似た病気に「子宮腺筋症」があります。子宮内膜症と同じく「子宮内膜に似た組織」が発症の原因となりますが、発症する部位が違うのです。では、「子宮腺筋症」とはいったいどんな病気なのでしょうか?

記事監修



高橋しづこ先生


産婦人科専門医。1995年、米国オレゴン州私立Reed Collegeを卒業。1997年、東海大学医学部へ入学。同大卒業後、東京大学医学部大学院より医学博士。その後は日赤医療センターや山王メディカルセンターで非常勤医師。女医+(じょいぷらす)所属。


▼詳細プロフィール

https://mycarat.jp/experts/138

■子宮腺筋症ってどんな病気?

「子宮内膜症」も「子宮腺筋症」も、その原因となるのは「子宮内膜に似た組織」です。


子宮内膜には、受精卵が着床するのに備えて増殖して厚くなり、着床がないと剥がれて月経血として体外に排出されるという機能があります。赤ちゃんのためのベッドメーキング係のようなもので、妊娠に備えて自らの組織をベッドにし、受精卵が着床しないと「ベッドはいらなかったのね」と片付けるわけです。


※子宮内膜には機能層と基底層があり、剥がれるのは機能層の部分です。


この増殖・剥離(はくり)と出血を繰り返す子宮内膜の組織が、正常に子宮(子宮内腔の上皮部分)にあればいいのですが、子宮内膜と似た性質を持つ組織が何らかの原因で別の場所にできることがあるのです。


この別の場所にできる「子宮内膜に似た組織」を「異所性の子宮内膜」といいます。厄介なことに「異所性の子宮内膜」はその場所で、まるで子宮内膜と同じように増殖・剥離と出血を繰り返すのです。これが子宮内膜症です。


子宮内膜症は、卵巣、卵管、子宮周囲の腹膜、時には子宮から遠く離れた肺など、さまざまな場所で発症しますが、子宮の筋肉の中に上記の「異所性の子宮内膜」ができることがあるのです。これが子宮腺筋症です。


  • 子宮内膜症

…異所性の子宮内膜が子宮以外の場所にできる病気

  • 子宮腺筋症

…異所性の子宮内膜が子宮の筋肉の中にできる病気


子宮腺筋症は同じ「異所性の子宮内膜」によって起こる病気なのですが、似ているようで発症の仕方が異なっています。


  • 子宮内膜症の原因

1.子宮内膜移植説…月経血の逆流によって子宮内膜の組織が別の場所に運ばれ、それが増殖して起こる

2.体腔上皮化生(たいくうじょうひかせい)説…何らかの原因で腹膜が子宮内膜に似た組織になり、それが増殖して起こる


⇒2つの説があって、1が有力視されています。

  • 子宮腺筋症の原因

子宮内膜の組織が子宮の筋肉層(子宮筋層)に入り込み、それが増殖して起こる

⇒なぜ子宮内膜の組織が子宮筋層に入り込むのかはよく分かっていません。

■子宮腺筋症の症状・特徴と治療は?

子宮腺筋症の主な症状は下のようなものです。

  • 生理痛

…月経時に感じるひどい痛み

  • 過多月経

…月経時に出血の量(月経血の量)が多くなります

  • 貧血

…過多月経があるので貧血になります

  • 不妊

子宮腺筋症患者の感じる生理痛は重く、ほとんどの人に痛みの自覚症状があります。また過多月経になるのも子宮腺筋症の大きな特徴です。出血量が増えるため、貧血を引き起こすことも少なくありません。


そもそも子宮内膜は女性ホルモンの分泌の増加によって増殖する性質があって、子宮筋層に入り込んだ異所性の子宮内膜もそれは同じです。そのため生理のたびに増殖し、病状が進行します。進行に伴って上記のような症状も悪化します。つまり、子宮腺筋症を放置すると、生理を重ねるごとに痛み・過多月経がひどくなっていくのです。


子宮腺筋症の治療には、

  • 薬物療法

  • 手術療法

の2つがありますが、ここで注意したいのは「薬物療法では子宮腺筋症を根治できない」という点です。薬物療法では、あくまでも生理痛を軽減する、異所性の子宮内膜の増殖を抑制するという効果しかありません。


一方の手術療法では、下のようなものが行われています。

  • 子宮の全摘出

…子宮を取ってしまうので根治になります

  • 子宮腺筋症病巣除去術/子宮腺筋症核出術

…子宮を温存するために、異所性の子宮内膜、その増殖した部分だけを取ってしまうという手術です

  • 子宮動脈塞栓術

…子宮腺筋症の病巣部分に通じる血管をふさいで、血流を遮断します。病巣に栄養がいかなくなることで壊死(えし)・縮小を狙ったものです

子宮の全摘出を行うと根治になりますが、当然それ以降の妊娠を諦めることになります。


「子宮腺筋症病巣除去術/子宮腺筋症核出術」については、妊孕性(妊娠できる能力のことです)を温存するために行われるのですが、『日本産科婦人科学会』のガイドラインによりますと、

症状の改善が得られ、術後妊娠例も報告されているが、現在のところまだ手術の有効性と安全性は確立されたとはいいがたい。妊娠時には子宮破裂を起こす可能性もあるため、臨床成績を集積することが必要である

(『公益社団法人 日本産科婦人科学会』「産婦人科 診療ガイドライン 婦人科外来編2014」P.83より引用)


となっています。「子宮動脈塞栓術」については『日本産科婦人科学会』では

156例に試みられて131例(84%)に症状の改善がみられているが結論は得られていない。今後、症例数の集積による詳細な検討が待たれる

としています(引用元:上記同)。ただし、この術式は、これから妊娠を希望する女性には行わないほうが良い、という指摘もあります。正常妊娠・正常分娩に至った例もあるのですが、妊娠に対する安全性が確立されたとは言い難い状況なのです。



子宮腺筋症は子宮内膜症に似ていますが、発症する場所が子宮だけに根治するのが「子宮の全摘出」しかないという厄介な病気です。また子宮内膜症、子宮筋腫といった病気と合併しやすいことでも知られています。上記のような症状がある場合には早く専門医に受診して「子宮腺筋症」かどうか検査を受けるようにしてください。

⇒参照記事:『公益社団法人 日本産科婦人科学会』『公益社団法人 日本産科婦人科医会』「産婦人科 診療ガイドライン 婦人科外来編2014」

http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2014.pdf

(高橋モータース@dcp)