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子宮内膜増殖症とは?原因と症状

2017.09.20

子宮内膜増殖症とは?原因と症状


月経のある女性の約10%が発症しているといわれる子宮内膜症ですが、この「子宮内膜症」と似た病気に「子宮内膜増殖症」があります。どちらも子宮内膜の持っている性質が原因となっていて、名前も似ているのですが、症状や治療法も異なる別の病気です。今回は「子宮内膜増殖症」の原因と症状を解説します。

記事監修



中林稔 先生


産婦人科専門医。日本医科大学卒業。東京大学医学部附属病院産婦人科で研修後、三井記念病院医長、虎の門病院医長、愛育病院医長を経て、現在三楽病院産婦人科部長。医師+(いしぷらす)所属。


▼詳細プロフィール

https://mycarat.jp/experts/126

■子宮内膜の性質が病気の原因となります

子宮内膜は子宮の内腔にある上皮組織で、赤ちゃんのベッドとなる機能を持っています。受精卵の着床に備えて増殖して厚くなり、その後着床がなければ剥がれ落ち、経血となって体外に排出されます(剥がれ落ちるのは子宮内膜の機能層と呼ばれる組織で、基底層という組織は残ります)。これが月経ですね。


子宮内膜の増殖・剥離(はくり)のサイクルには2つの女性ホルモン「エストロゲン」と「プロゲステロン」の分泌が関わっています。エストロゲンの分泌(の増加)によって増殖し、プロゲステロンの分泌で維持をして、両ホルモンが消失する際に剥離するのです。


この「女性ホルモンの分泌によって増殖・剥離と出血を繰り返す子宮内膜の組織」が病気の原因となります。


子宮内膜に似た組織が、本来あるべき場所ではなく、卵巣、卵管、子宮周囲の腹膜、ダグラス窩(子宮と直腸の間にあるくぼみのこと)などで増殖するのが「子宮内膜症」です。


これに対して、子宮内膜自体が過剰に増殖し、普通よりも厚くなってしまうのが「子宮内膜増殖症」です。子宮以外の場所で増殖する子宮内膜に似た組織を「異所性の子宮内膜」と呼びますから、

  • 子宮内膜症

異所性の子宮内膜の増殖によって起こる病気

  • 子宮内膜増殖症

子宮内膜の過剰増殖によって起こる病気


とまとめることができます。子宮内膜増殖症には、組織の腺細胞が「正常」でその数だけが異常に増えている場合と、腺細胞が正常ではなく「異型」に変化している場合があり、後者を「子宮内膜異型増殖症」と区別して呼びます。


また、「子宮内膜増殖症」「子宮内膜異型増殖症」それぞれを、腺細胞の構造の変化のある、なしによって「単純」「複雑」のふたつに分けます。つまり、

・単純型子宮内膜増殖症

・複雑型子宮内膜増殖症


・単純型子宮内膜異型増殖症

・複雑型子宮内膜異型増殖症

の4つに分類されるのです。これには理由があって、異型、また複雑の場合にはがん化のリスクが高まるからです。『日本産科婦人科学会』の「産婦人科 診療ガイドライン 婦人科外来編2014」によれば、子宮内膜増殖症の場合には、8割は自然に退縮しますが、

  • 単純型子宮内膜増殖症ではがん化が「1%」

  • 複雑型子宮内膜増殖症ではがん化が「3%」

となっています。また、子宮内膜異型増殖症の場合には「子宮体がん」の0期と診断され、がん化のリスクが子宮内膜増殖症よりも高いのです。『症例から学ぶ婦人科腫瘍学』の「3)子宮体部病変 子宮内膜増殖症」によれば、

  • 単純型子宮内膜異型増殖症ではがん化が「8.3%」

  • 複雑型子宮内膜異型増殖症ではがん化が「21.4%」

となっています。つまり、異型ではない子宮内膜増殖症では8割の患者には自然治癒が見込めるが、その複雑型ではがん化のリスクは高い、また子宮内膜異型増殖症の場合には子宮体がんの0期と考えないといけない、ということなのです。

■なぜ子宮内膜増殖症になるの?

子宮内膜はエストロゲンの分泌によって増殖しますが、プロゲステロンとのホルモンバランスがうまく取れていないと子宮内膜の増殖・剥離のプロセスがうまく機能しないのです。何らかの原因でエストロゲンが過剰に働くと、子宮内膜が過剰に増殖することになるのです。


エストロゲンが過剰に優位な状態になってしまうのには次のような場合があります。

  • 無排卵

プロゲステロンは排卵直後から卵巣でつくられますが、排卵がないということは、プロゲステロンの分泌が極端に少なくなり、エストロゲンが過剰に優位になります。

  • エストロゲンを成分とする薬を服用

エストロゲンを成分とする薬を服用している場合には、エストロゲンが過剰に優位な状態がつくられやすくなります。また服用し過ぎる場合も同様です。

  • 黄体機能不全

プロゲステロンは「黄体ホルモン」と呼ばれ、黄体から分泌されます。黄体機能不全は黄体がうまく働かないことですから、この場合もプロゲステロンが分泌されずに極端に減少し、エストロゲン優位な状態になります


また「肥満」によってもプロゲステロンの分泌が減るという指摘もあり、肥満の人はエストロゲン優位な状況になりやすく、そのぶん子宮内膜増殖症にかかりやすいといえます。

■子宮内膜増殖症の症状は?

子宮内膜増殖症の症状としては以下のようなものが挙げられます。

  • 過多月経

月経時に出血の量(月経血の量)が多くなる

  • 不正性器出血

月経時以外の性器からの出血

  • 貧血

過多月経があるので貧血になる

  • 倦怠(けんたい)感

体にだるさや疲労感を感じる

  • 動悸(どうき)

心臓の拍動が自分でも感じられる

  • 不妊

子宮内膜が異常に厚くなることによって受精卵の着床困難などが起こり、不妊につながる


子宮内膜増殖症の症状で最も特徴的なのは「出血」です。月経量が増える過多月経では血の塊のようなものが混じることもあり、また月経時以外の出血「不正性器出血」が多く見られます。この出血量の増大が貧血を招き、貧血になると倦怠感、動悸を引き起こします。



子宮内膜増殖症は自覚症状だけでは診断することが難しい病気です。また、上記のように「異型」の子宮内膜異型増殖症の場合には、子宮体がんとしての治療が必要になりますからできるだけ早く見つけなければいけません。もし現在、過多月経や不正性器出血があるという人は早く精密検査を受けるようにしましょう。

⇒参照記事:『公益社団法人 日本産科婦人科学会』『公益社団法人 日本産科婦人科医会』「産婦人科 診療ガイドライン 婦人科外来編2014」P.67

http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2014.pdf


⇒参照記事:『症例から学ぶ婦人科腫瘍学』「3)子宮体部病変 子宮内膜増殖症」

http://www.jsog.or.jp/PDF/57/5709-211.pdf

(高橋モータース@dcp)