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「睡眠時間」がもったいない。究極のテーマ「どうして人は眠るのか」を考える

2018.09.19

「睡眠時間」がもったいない。究極のテーマ「どうして人は眠るのか」を考える


毎日仕事・家事が忙しくて、眠る時間さえもったいないと感じる……。誰しも、一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。

そもそもなぜヒトは眠るのか、眠ることに何のメリットがあるのか、と考える方もいると思います。


実は、人間が属する哺乳類だけでなく、脊椎動物、果ては昆虫まで、脳を持つほぼすべての生物は眠ると考えられているのです。睡眠というシステムは決して時間の無駄ではなく、さまざまなメリットを持ちます。今回は「なぜヒトは眠るのか」、そして眠ることでの利点を解説します。

睡眠は「脳の洗濯」の時間

睡眠によって最も恩恵を受ける臓器は脳です。簡単にいうと、睡眠をすることで脳は「洗浄」されていることになります。


脳では老廃物の処理を、血液と「脳脊髄液」と呼ばれる液体が担っています。そして、この脳脊髄液による老廃物の処理が行われるのは、主に睡眠中(厳密にはノンレム睡眠中)なのです。睡眠中に、脳に溜まった老廃物がなくなるので、まさに「洗浄」といえるでしょう。

睡眠により記憶が強化される


脳の洗浄という生理学的側面だけでなく、私たち自身が実感できる睡眠の効果としては、記憶の強化、つまり「学んだことの上達」があげられます。


睡眠が記憶を強化することを示す実験として、慣れが必要な課題を被験者に行わせ、睡眠をとった被験者ととらない被験者のうちどちらがその課題の遂行が得意となるのかを調べたものがあります。


事前に被験者は2グループに分けられており、課題の練習後、片方のグループは1時間の睡眠をとり、もう片方のグループは起きたまま1時間休憩しただけの状態で課題を行いました。すると、睡眠をとったグループはとらないグループに比べて、課題の成功率が上昇しました。つまり、先述のように睡眠によって「学んだことの上達」が見られたのです。


練習を重ねることで、それまでできなかったことがある日スムーズにできるようになった。こんな経験はみなさんにもあるでしょう。それには睡眠が深く関与していたのです。

進化の上では謎だらけの、睡眠というシステム


睡眠のメリットについてみてきましたが、進化論的にはなぜ生物が「眠る」という機能を残したのかは謎に包まれているそうです。


生物は、生存に有利になるように進化を重ねてきたと考えられています。たとえば、自然の一部に形をまねる「擬態」をする生物(コノハチョウやハナカマキリなど)は、敵から逃れたり、えさとなる生物を待ち伏せて食べることができるなど、生存に有利だったがために、木の葉や花びらのような体の形になったといわれています。


ではもし、脳を持つような高等生物で、眠らなくとも生きていけるような生物が生まれたらどうでしょう?それらは、ほかの生物が眠っている間に襲って食べることができるなど、生存競争において相当なアドバンテージを獲得できるはずです。


にもかかわらず、すべての高等生物は眠ります。生存にかなりの有利さをもたらすであろう、「睡眠を排除すること」は、永い進化の過程においても実現しなかったのです。これほどまでに生物に影響をもたらす「睡眠」の謎に、今でも多くの生物学者が魅了されています。

参考:

櫻井武 睡眠の科学・改訂新版 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか 講談社 2017

(執筆・監修 ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション株式会社)