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「睡眠の1サイクルは90分」は間違いだった!?睡眠科学で分かったこと

2018.07.15

「睡眠の1サイクルは90分」は間違いだった!?睡眠科学で分かったこと


こんな話を聞いたことはありませんか? 「睡眠の1サイクルは90分なので、起床時刻から90分の倍数で逆算して就寝時刻を決めると良い」。もっともらしく聞こえるのですが、実はこれ、間違いなのです。今回はこの「睡眠サイクルの90分伝説」についてご紹介します。

記事監修



堀内和一朗 先生


皮膚科医、抗加齢専門医、国際レーザー専門医、精神科医。

東京医科歯科大学医学部卒業。小張総合病院皮膚科医長、総合クリニックドクターランド船橋皮膚科部長を経て、現在は関東の精神科病院勤務。人間総合科学大学非常勤講師。

医師+(いしぷらす)所属。

■「90分伝説」はなぜ信じられているのか?

人間の睡眠は、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」が切り替わりながら進行します。レム(REM)は「Rapid Eye Movement(急速眼球運動)」の略で、人間の睡眠には、なぜか「急速に眼球が動く睡眠期間」と「そのような眼球の動きが見られない睡眠期間」があるのです。

  • レム睡眠(REM Sleep)

    急速な眼球の動きが観測される

  • ノンレム睡眠(Non-REM Sleep)

    急速な眼球の動きが観測されない

レム睡眠とノンレム睡眠を合わせて1サイクル90分、睡眠はこのサイクルを何度も繰り返す、というのが「90分伝説」の元になっています。サイクルの切れ目で起床したほうが起きやすいといわれ、90分の倍数で睡眠時間を決め、起床時間から床に就く時刻を逆算しよう!というわけです。


しかし、実は人間のレム睡眠-ノンレム睡眠を合わせた時間は個人によって異なり、しかも「約60-110分」とかなり幅があることが分かっています。ですから、90分の倍数に合わせて就寝時刻・起床時間を調節しても期待したような効果が得られるかは眉唾なのです。


この90分伝説がどこから来たのかいろいろ調べてみたのですが、初出の出典元はよく分かりませんでした。1時間半という時間が、なんとなく使いやすい、あるいは信じやすい単位であることから広まったのかもしれません。

■睡眠科学で分かってきた睡眠について

では、睡眠について現在分かっていることをご紹介しましょう。


●まず「ノンレム睡眠」から入る!

人間が眠りに就くと、まず浅いノンレム睡眠から徐々に深いノンレム睡眠へ移行していきます。ノンレム睡眠が終わると次にレム睡眠に移ります。ノンレム睡眠が始まり、レム睡眠が終わるまでは約60-110分で、この「ノンレム睡眠-レム睡眠」を一晩で4-5回繰り返すのです。


●「成長ホルモン」の分泌は最初のノンレム睡眠時に最も盛ん

最も深い睡眠は最初のノンレム睡眠の期間に現れます。またこの睡眠期間に「成長ホルモン」が多く分泌されます。成長ホルモンは体の修復などにも必要であるため、成長期の子供だけではなく大人にとっても重要です。


つまり、よくいわれる「22時-2時の間に成長ホルモンがよく分泌される」というのは間違いです。正確には「眠りに就いた後、最初のノンレム睡眠中に最も分泌される」です。時刻は関係ありません。


●眠っていてもCPUは動き続ける!

「レム睡眠中には体が寝ていて脳が起きている」「ノンレム睡眠中には体も脳も寝ている」という、よくいわれる話も最近の睡眠科学の研究によれば間違いです。


レム睡眠中の脳は覚醒時よりもむしろ活動レベルが高いことがあり、またノンレム睡眠時でもレム睡眠時と比べて脳の代謝量はほとんど変わらず(10%落ちる程度)、活動が盛んな(脳の)部位があることも分かっています。


ですので、レム睡眠とノンレム睡眠の差を「脳が起きている・寝ている」と単純に切り分けることはできません。コンピューターにたとえるなら、どちらの睡眠でもCPUは動いているものの、何をしているのかのモードが違う、というのが正しいようなのです。


ただし、ノンレム睡眠時にある最も深い睡眠では、脳の代謝量が1日の中で最も減る(エネルギーを使わなくなる)ので、これを指して「休息」と呼ぶ研究者もいらっしゃいます。


しかし、ノンレム睡眠時にも記憶の固定化・強化といった作業を行っていると考えられています。こうなると「休息」とは何なのかという定義の問題にもなってきますが、私たちが休息と聞いてイメージするような「何もしないですっかりリラックス」みたいなものでないことは確かです。



睡眠についてはまだよく分かっていないことが多く、『筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構』の柳沢正史博士(機構長)に伺ったところ、「謎だらけというのが本当のところ」なのだそうです。


90分伝説もそうですが、ちまたで広く知られていたことが間違いだったと分かるのも、こと睡眠については、研究成果によって古い知識がどんどん更新されていくためなのです。


ともあれ、十分な睡眠は健康に必要不可欠なもの。睡眠についての間違った知識はできるだけスルーするようにしましょう。


(高橋モータース@dcp)